幼稚部3年生の劇「おりひめとひこぼし」の活動

 7月に行われた行事「七夕まつり」では、3年生が「おりひめとひこぼし」の劇を発表しました。発表に向けて、本番の1か月前から少しずつ、活動を始めてきました。

 まずは、物語を知るところから始まりました。

 紙芝居「おりひめとひこぼし」の読み聞かせのあと、即興で台詞も動きも思いのままに役になりきって遊び、何度も劇ごっこをして遊びました。

 織姫が2人いても、牛役が4人いても、何でもありの劇ごっこです。

 また、やりたい役を複数担当しても、物語の展開に応じて役を自分で変えながら何度も遊びました。

 劇ごっこ遊びは、台詞も、動きも何も決まっていません。物語の役になりきって、自分の心の動いたままに話し、考え、動きます。

 繰り返し遊ぶごとに、少々展開が面白い方向に変わることもあります。それが、劇ごっこ遊びの醍醐味です。

 一番人気の役は、牛とカササギでした。そういうわけで、織姫と彦星の役は、たいてい大人(先生たち)でした。時には、お母さん方も一緒に劇ごっこをしました。

 2週間、劇ごっこ遊びを存分に楽しみました。

 そのあと、みんなでもう一度紙芝居をみました。そして、「このとき、織姫は何てお話しているんだろうね」「牛さんはどんな気持ちかな」などと、なりきって遊んできた役たちの気持ちを改めて一緒に考えました。

 この時に子どもたちが考えた気持ちや言葉をもとにして、台本を作っていきます。

これまで劇を発表することは内緒にして劇ごっこ遊びを楽しんできたのですが、満を持して子どもたちに、七夕まつりで発表することを伝えました。

 「1年生も2年生も、お母さんやお父さん、そして先生たちもたくさん見に来てくれるよ」と話すと、「えええ!」とびっくりする子、「いいね!」と楽しみにする子、「どきどきするな」「…はずかしいからやりたくないな」と少し不安を感じる子、一人一人がそれぞれにいろいろな気持ちを抱いたようでした。

 本番まで約10日間、衣装を着、小道具が増え、台本ができ、劇ごっこから劇発表へと活動は少しずつ進んできました。

 劇ごっこでは、即興で自由に生き生きと表現を楽しみ、友達との自由な掛け合いを自然に楽しめていた子どもたちですが、本番に向けた「劇の練習」になると、きちんとやりたいという思いからか、どこか暗い表情になる日が続きました。

 一見、ネガティブな気持ちの変化ともとれそうな状況ですが、そうではなく、子どもたちがそれだけ、自分がどう見られるかという意識とともに、自分なりの理想の姿があり、それに対してどれだけ自分でやりきれるか、自分を見つめようとする気持ちの芽生えなど、そんな3年生らしい成長の姿でもありました。

 本番が近づくにつれ、子どもたちの緊張は高まっていきました。なかなか思うようにできなくて、涙があふれる場面もありました。

 見ているお友達がわかるようにするためには、どうしたらいいのかな。

 台詞が伝わるためにはどうしたらいいかな。

 お顔を見せよう、大きな声で話してみよう、身振りも大きくつけてみよう、子どもたちとその時その場で考えながら、毎日、本当にとってもよく頑張りました。

 そして、迎えた本番の日。

 緊張や不安な気持ちを抱えながらも、子どもたちはそれぞれが自分なりに役をしっかりと表現しました。

 また、自分たちの出番や、劇の状況をよくみて、小さな声で「つぎは、○○ちゃんのばんだよ」「あ!○○○だよ」と互いに声をかけ合い助け合うような姿もみられました。“みんなでつくりあげる”“みんなでがんばっている”という仲間意識の成長が感じられました。

 3年生にとって、幼稚部での大きな晴れ舞台のひとつです。

 いろいろな思いを抱きながら過ごした1か月だったと思います。

 お友達のすてきなところをたくさん発見したり、達成感を通して自分の頑張りを実感し自信へとつながったり、様々な経験ができたのではないかなと願います。

 今回の劇発表をきっかけに、これからもいろいろな場面で、みんなの力を合わせて作り上げていくのが楽しみです。