パリ聾学校との姉妹校提携

※創立150周年記念誌より抜粋・要約

平成15年(2003年)、本校はフランス国立パリ聾学校と姉妹校提携を結びました。そのきっかけは、執筆者である本校元校長の齋藤先生が留学中に出会った、パリ聾学校教員ジョエル・ルモルダン氏との交流にありました。1960年代後半、齋藤先生はパリ大学に在籍しながら同校で授業見学や実習を行い、ジョエル氏と親交を深めていきました。その後、1998年に再会を果たした際、ジョエル氏の強い働きかけにより姉妹校提携の準備が進められ、2003年の調印に至りました。
提携式が行われた当時のパリ聾学校では、すでに大きな教育改革が進められており、かつての教員主導口話中心の教育から、手話を重視した教育へと移行していました。また、就学制度の整備により、同校は職業教育を担う中等教育機関となり、幼児教育や初等・高等教育は他の通常学校と連携して実施される体制に変わっていました。提携式当日には、校内の職業科見学や式典が行われ、教育内容や施設の充実ぶりが印象に残ったといいます。
しかし、すぐに組織的な交流へと発展することはなく、しばらくは手紙のやりとりにとどまっていました。流れが大きく変わったのは2012年のことです。パリ聾学校の教員が来日し、実質的な交流の再開を希望したことが契機となりました。翌年には日本側教員の訪仏が実現し、2013年には高等部生徒の訪仏、2014年にはパリ校の生徒が来日するなど、交流が本格化していきました。これまでに生徒の相互訪問はそれぞれ4回を数え、コロナ禍においてもオンライン交流を継続するなど、連携は着実に発展しています。
齋藤先生は、こうしたフランス側の交流希望の背景には、日本文化に対する関心の高まりがあるとし、交流の礎を築いてきた先生方への敬意を示しています。また、ご自身が校長を務めていた時期に読まれた明治期の記録の中で、小西信八先生が、世界初の聾学校創設者であるド・レペを顕彰していた事実にも触れ、フランスと日本が歴史を重んじる文化的共通点を持つことの意義を強調されました。聴覚障害教育の歴史と伝統を大切にしながら、今後の国際交流がさらに豊かで意義深いものとなることを願いつつ、文章を締めくくられています。

高等部普通科 国際交流の記録